私の臨床感〜トラウマ体験とは

 精神科クリニックに勤務していて感じたのは、来院される方の大半が、虐待や何らかのトラウマ体験の被害者であるという点です。統合失調症を発症される方でも、引き金には何らかのトラウマティックな体験が関係していると感じます。

 

 ではトラウマ体験とはどのようなものかと言うと、何らかのショッキングな出来事により自己統制感、自己コントロール感を失ったことによるもの、他者や世界との間にあるべき自己との間の境界線を失い、時に侵略、搾取された状態、自由意志を奪われた状態とも言えます。虐待、DV、パワハラ、モラハラ、イジメ等がそうでしょう。マインドコントロール下に置かれている状態と考えます。家庭内の虐待的環境も、宗教によるものも、また独裁者によるものも、全て起こっている原理や力動は同じと思っています。戦争や災害によってもトラウマは体験されます。制御不能な状態、自分の力ではどうすることもできない出来事は、生きていく上では誰もが一度は体験することと思います。

 

 これらの状態から回復していくには、傷ついた自他の間の境界線を修復し、自己コントロール感を取り戻す必要があります。そのためには安全感の回復、起こった出来事に対する認知の再構成、再び自分自身を正常に守れるようになれること等が必要です。このため大きなトラウマを体験すると、その後の心理的回復には多くの作業を必要とします。これらのトラウマ治療には催眠療法が有効です。